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古代小麦のグルテンは良質であったのか?現代の小麦事情

古代小麦のグルテンは良質であったのか?

世界中で、忘れ去られていた過去の食材が見直されています。古代米、古代の豆、古代の麦などなど、食生活が貧しかった時代には必需品であった食材が、現在は健康食品としてもてはやされていますよね。

その中で、小麦については近代の「小麦」は古代のそれにくらべると品質が劣っていて、グルテンによって引き起こされる免疫疾患「セリアック病」はそのために生まれたと言われることもあります。

しかし、科学の分野から見てそれは正しい見解なのでしょうか。

農業の誕生によって変化していった自然の遺伝子

古代に人間が生みだした「農業」により、野生の遺伝子も少しずつ変化していっています。人間がより甘い果実、より生産性の高い品種、より毒性の低い植物、あるいは外観が美しいものを選択し、栽培するようになっていったからです。

「遺伝子の改良」と呼ばれるこのプロセスにおいて、人間によって栽培される植物はその原点である野生の品種とは大きく異なる性質を持つようになりました。

数年前から科学者たちが疑問を持つようになったのは、このプロセスにおいて誤って「より栄養価が低く」「より健康的ではない」「より毒性の強い」品種が選択された可能性もあるのではないか、ということ。

穀物の摂取に伴う現代のさまざまな疾患は、すべて「近代の小麦」に原因があり、それは「古代の小麦」とは品質を異にするからだ、という学説に異論が登場するようになったんです。

「古代」とはどれくらい「古代」なのか

たとえば「パンコムギ」は、スペルト小麦と野生のイネ科植物の遺伝子が融合したもので、本来は自然界に存在しないものでした。そして、こうした改良は過去の一世紀に急速に加速しています。

つまり、「古代の小麦」といっても、実際には2種に区分されます。学名を「Triticum」と呼ぶ正真正銘古代から伝わる小麦がまずひとつ。そして、近代に小麦が改良される前まで、つまり100年ほど前まで人々が食べていた小麦がもうひとつ。

たとえば「ヒトツブコムギ」は栽培化された小麦の中で最も古いものであり、その歴史は1万年前に遡ります。染色体の数は14、遺伝子学的には非常にシンプルな品種であり、現在は近代の小麦にその地位を奪われているといってよいでしょう。

「ヒトツブコムギ」は、古代ローマ時代にその消費が最高潮に達したのを最後に、中世には「パンコムギ」が普及して徐々に姿を消していきました。トスカーナの郷土料理である麦のスープや、ヒトツブコムギを使ったビスケットなどのレシピに、かろうじてその名を残しています。

しかし昨今の健康ブームで、人類の手があまりかかっていない小麦としてのイメージが大々的に広告に登場。質の良い食材にこだわる人々から大注目を浴びています。とはいえ、この「ヒトツブコムギ」がセリアック病の人に有害ではないという説は、まだ科学的に実証できていないのだとか。

健康ブームでも「パンコムギ」のダントツ優位は変わらず

農業技術の進歩や料理法の改良により、染色体14の古代の小麦にはその後数万の遺伝子が加えられて、パスタの原料となる「デュラム小麦」が生まれ、ほかの品種との交雑により「スペルト小麦」や「パンコムギ」が生まれました。

そして、「パンコムギ」の生産量は年間なんと7億トン。全小麦の生産量の95パーセントを占めています。硬質の小麦「デュラム小麦」や「スペルト」小麦は、体によいと言われて消費が増加したとはいえ圧倒的な少数派です。

ここ1世紀のあいだに改良される前の小麦に関していえば、高さが1メートルを超えるものが多く、そのために土壌からより多くのミネラルを吸収していたため栄養価が高い、という説も。

また、上記にあげたように大量生産をしていないために、コストの面では「パンコムギ」に劣るものの、品質の面では優位にあるという説も否定できません。

グルテンの強さを表す「W」という表示を見ると、商業用に作られた小麦は「250」、「古代の」とうたわれた小麦は「60〜70W」とあります。数字だけ見れば確かに少数派の小麦のほうがアレルギーに関しては出にくい、といえるかもしれません。

参考:
Grani antichi, grani autoctoni, glutine, genetica. Smontare le leggende con la scienza e la ricerca – Gambero Rosso
Grano antico fa buon glutine? – Scienza in cucina – Blog – Le Scienze
Grani antichi: 10 motivi per consumarli e dove trovarli – greenMe
Grani antichi: le verità nascoste | Dissapore

味博士の研究所 編集部

味覚センサーレオを中心として、味覚や食の科学に関するニュースを配信しています。