私たちは舌で味を感じています。舌にある味蕾をセンサーとして、基本5味(甘味・旨味・苦味・酸味・塩味)を感じ、そのバランスで美味しいか美味しくないかを判断します。
しかしお肉が焦げたにおいなど、良い香りのものが美味しく感じるように、人間が感じる「美味しさ」にはにおいも関わっています。
たとえば納豆やセロリ、パクチーなど、においが強いものに対して「まずい」と感じることはありませんか?また、風邪で鼻がきかなくなったときなど、「食べ物が美味しくない」と感じることもあるはず。これは総合的な味の評価のひとつに嗅覚も関わっているからなんですね。
鼻をつまむと味の感知にどのような影響があるのか
19〜26歳の大学生86人を対象として、鼻をつまんだ状態がどれだけ味を感知できないのか調べた研究[*1]があります。被験者に鼻をつまんだ状態、つままない状態の条件において一口サイズの羊羹を食べてもらい、その直後の基本5味(甘味・旨味・苦味・酸味・塩味)の感知しやすさと感覚的強度の評価をしてもらいました。
その結果、甘味・旨味・塩味については鼻をつままない状態のほうが、鼻をつまんだ状態よりも有意に味の感覚が増したそう。ただし、酸味や苦味についてはあまり差が見られませんでした。
また、これは甘味にのみ有意差が見られた結果ですが、感知のしやすさと感覚的強度の相関関係から、ヒトが味質を認知するために、嗅覚情報が手がかりになっていることもわかりました。つまり、においから「こういう味だ」と予想することでその味が簡単に感知できるようになる、ということです。
風邪で鼻がきかなくなったときに、「あんまり味がしない」と感じるのは、においを感じられないことで味の感度が下がっているのに加え、嗅覚情報がないことで味の判別が遅れているためなんですね。
甘味・旨味・塩味に関しては、嗅覚情報があることによって味覚強度が増大するという結果が出ています。気温が低い日が続いていますが、食べ物の美味しさをしっかり味わうためにも体調には気をつけてくださいね。
参考:
食品の味わいと味覚・嗅覚