不安やストレスを感じると、なぜか甘いものを食べ過ぎてしまう……ダイエット中でもそうでなくてもついやってしまって後悔すること、ありますよね。また、とくに「甘いものが大好き!」というわけでもないのに、気づいたら甘いものを日常的に摂取していることはありませんか?
「聴く音によって食べ物の味は変わる?甘味・塩味の味覚閾値への影響」の記事にもあるとおり、甘味は心理的要因を受けやすい味覚とされています。
では、その「不安」が味覚に対してどのように影響するのか。特性不安と味覚について調べた研究をご紹介します。
不安によって味覚の感受性が上がる?
研究では、同学年の大学生61名(参加者73名-除外者12名)を対象として「特性不安」が味覚に及ぼす影響について実験されました[*1]。特性不安とは一時的に感じる不安(状態不安)ではなく、慢性的に不安を感じる傾向のこと[*2]。不安を感じやすい人とも言えるでしょうか。
試験した味覚は基本5味(甘味・旨味・苦味・酸味・塩味)のうち甘味、酸味、塩味の3種類。それぞれ甘味は砂糖、酸味は醸造酢、塩味は天塩を使用。また、濃度は重量に対し0.0、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8%の6種が用意されました。
被験者は不安の特性の強さによって高不安群と健康群に分けられ、甘味、酸味、塩味の味覚試験が実施されました。また、参加者の感情と慢性的なストレス感に対する評定も行われました。
すると、高不安群のほうが健康群よりも甘味の感受性が高いという結果に。酸味・塩味については有意差は認められなかったようです。
また、気分評定および自覚的ストレス評価の結果によると、高不安群は健康群に比べて覚醒レベルが高く、周囲に注意を配って物事を正しく認識しうる状態にあること、さらにストレスを強く感じていることもわかりました。
甘味はもっともヒトの生理的物質に由来する味覚要素とされています。高不安の人たちは、誘発されたストレス感によってストレスという刺激に体が急速に対応しようとし、エネルギー源である糖分を特に必要とする傾向が論文内で示唆されています。
甘味を感じやすい人ほど甘い物を摂取している[*3]という研究結果もあります。ストレスを感じて甘いものを食べ、甘いものの摂取頻度が上がり、そして甘味の感受性が上がるのではないでしょうか。特性不安であれば、その傾向がより一層強くなりそうです。
甘味ばかりを食べていると甘味の感受性ばかりが上がり、他の味を感じる力が落ちてしまいます。
とはいえ、体が欲する要求に対して我慢するのは辛いもの。ここは甘いものばかりを食べるよりも、まずはストレスや不安感を緩和することを目標にしたら良いのではないでしょうか。まあ、簡単ではないですが……!
*1 個人の不安特性が甘味感受性におよぼす影響
*2 問診と心理検査
*3 食生活状況と味覚感度に関する研究
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