ケーキによってくるハエ…その理由とは
美味しさはどの生物でも同じではありません。例えば、ネコちゃんは基本的に甘味を感じないようです。甘味を感じるネコちゃんがいる可能性もありますが、ほとんどのネコちゃんにとって甘味は意味を持っていません。
一方で、ケーキを食べようとしたらいつの間にか小さなハエが飛んできたという経験はありませんか?
たいていの人は不快に思うでしょうが、ちょっと考えてみてください。あの小さな身体でスイーツやフルーツが好きだなんて可愛くないですか?まあ可愛くなくてもいいのですが、どうしてあのハエはケーキが好きなのでしょう。
なお、「虫なんか絶対ダメ!」という方は、この記事はスルーしてくださいね。
昆虫はいろいろな部分で味を感じている
実は昆虫の場合、味や香りを感じる部分は身体のあちこち(脚や食道、羽、産卵器官)にあります。特に重要なのは脚先[※1]。脚先に味覚を感じる細胞があるのです[※2]。
多くの昆虫では、脚の先に「ふ節」と呼ばれる部分があり、そこに小さな毛が生えていて、そこでまず味を感じます。
ちなみに昆虫の場合、味覚が生殖行動にも関係しているので、脚先で異性の味見をすることもあります[※3]。
ショウジョウバエが食べ物の上を歩くのは味を感じているから
ケーキに集ってくるコバエには何種類かありますが、よくいるのは目の真っ赤なショウジョウバエというハエ。
ショウジョウバエくんたちは、ケーキなど食べ物の上を歩いて「これはイケる」とか「こいつはダメだ」とか感じています。
ハエが脚先をすりすりしているのは、大事な味覚器官を綺麗にしておくためという意味もあるようです。
ショウジョウバエくんは脚で甘味を感じた後、唇の周りの唇弁でも感じています。2度味わうグルメなんですね。
ショウジョウバエが好むのは甘味と水
ショウジョウバエくんの場合、甘味は大好きな味です。微妙な濃度差でもより甘いものを好むという実験結果もあります[※4]。塩味や苦味、水もわかります。甘味と水と低濃度の塩は好きな味ですが、しょっぱすぎるのと苦味は嫌いなようです。
旨味に相当する味覚はないようですが、ヒトの甘味感覚とは違うかたちで果糖を味わっていることがわかっています[※5]。果糖は文字通り果物に多く含まれているので、彼らにとっても大事な味覚なのでしょう。
というわけで、ショウジョウバエくんはケーキ(特にフルーツケーキ?)が大好きなんですね。
たいていの人間は誰もショウジョウバエくんに「ケーキあるよ、おいで」とは言ってあげないので、彼らは自力でケーキを見つけないといけません。基本的には香りでわかるのではないかと思いますが[※6]、ショウジョウバエくんからしたら哀しいことですね。
もし今度、ケーキ…特にフルーツ系のケーキを買ってきたら、「ショウジョウバエくん、ケーキ買ってきたんだけど、いっしょに食べない?」と誘って、赤い瞳を見つめながら楽しくケーキデートをしてみてはいかがでしょうか?
※1 ハエは食べ物を“足”で味わう?――東北大、ハエの味覚神経を解明
※2 ショウジョウバエの味覚受容メカニズム
※3 愛のポーズは味覚で決まる
※4 ショウジョウバエの甘味受容体
※5 昆虫が味を感じるメカニズムを解明:果糖の受容体の発見から
※6 ショウジョウバエはソーダ水の味がわかる