味を感じる味蕾の数は、グルメな“ヒト”よりウシのほうが多かった!?

味蕾の数が多い=グルメ…ではない?

脊椎動物の舌には、味を感じる器官「味蕾」があります。味蕾によって感知できるのが基本5味(甘味、旨味、酸味、苦味、塩味)。

味蕾の数は動物の生体や進化の過程によってそれぞれ違います。そして、味蕾が多いほどさまざまな味を感知することが可能。しかし、だからといって「味蕾の数=グルメ」という単純な話ではないんです。

味覚とは食べ物の安全と危険を選り分ける、生命維持や危機管理のために体に備わった重要な働きのひとつ。動物は、甘味=炭水化物、塩味=ミネラル、酸味=腐敗、苦味=毒、旨味=タンパク質としてそれぞれの味を感知し、体内に取り入れる前に安全で栄養になる物なのかを吟味しているのです。

大人になると半減する?!ヒトの味蕾の数は約5,000個

では、ほ乳類史上最もグルメなヒトの味蕾の数はどのくらいあるのでしょうか。

ヒトの場合、乳児の頃は舌だけではなく口の中や唇にも味蕾があり、その数は約10,000個と言われています。それが成人になる頃には半分の約5,000個になり、年齢を重ねるごとに味蕾の数は減っていく傾向にあります。

お年寄りに塩辛いものや甘いもの、濃い味のものを好む人が多いのは、はっきりと分かりやすい味だからなんです[※1][※2]。

次は私たち人間に寄り添う身近な動物の味蕾の数を比較してみましょう。肉食代表のネコ、雑食代表のイヌ、草食代表のウシを取り上げてみたいと思います。

比較してみよう!ネコ・イヌ・ウシの味蕾の数とその理由

ネコの場合

ざらざらした舌が特徴のネコは、愛らしい外見ではあるものの立派な肉食動物です。ネコの味蕾の数は約500個。ヒトと比べてもずいぶんと少ないですね。

肉食動物の多くは生餌を好むので腐敗や毒を心配する必要もなく、また食べるものもだいたい決まっているので毒の危険も多くありません。タンパク質の味さえ分かれば良いので、たくさんの味蕾を持つ必要がなかったんです[※2]。

イヌの場合

嗅覚が鋭いことでも知られるイヌの味蕾の数は約1,700個です。イヌの祖先であるオオカミはネコと同じように肉食。そのため味蕾の数はこれよりもっと少ないものでした。

しかし、イヌは狩りや牧畜などのパートナーとして、古くから人間と生活を共にしてきました。そのため、タンパク質だけではなく人間と同じような食べ物を食べても栄養として吸収できるように進化。同時に炭水化物=エネルギーの味を感知するため、味蕾の数も増やしてきたのです[※2]。

ウシの場合

最後は草食代表、ウシの登場です。ウシの味蕾の数はなんと約20,000~25,000個もあります。ウサギやヤギなど他の草食ほ乳類も約15000~17000個と比較的多いのですが、その中でもウシはダントツ!

色や形状など見た目では違いの分かりにくい草の中から、栄養となるものと有害なものを的確に選り分けるために味蕾が発達したと考えられています[※3]。

食べ物から生活用品まで…草食動物のすごさを再確認!

ウシやヤギ、ウマなど大型の草食動物は、食料としてだけではなく衣料や農耕など私たち人間の生活に深く関わっています。

なにより人間が消化できないセルロース(食物繊維)たっぷりな草を食べ、その複雑な消化器官によってタンパク質や脂質に変換してくれます。そして、それらを利用することで人間の生活は飛躍的に豊かになったんです[※4]。

のんびりと草を食む牛ですが、実はとってもすごいヤツ。牧場で見かけたら、ぜひこのエピソードを思い出してみてくださいね!

参考:
※1 WONDER MOVE 人体のふしぎ
※2 文集新書・ねこの秘密
※3 ブルーバックス 図説・感覚器の進化―原子動物からヒトへ 水中から陸上へ
※4 図説・世界史を変えた50の動物

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