高知のスーパーにはうつぼが並んでいる!?
海のギャングと言われるうつぼ。魚というよりヘビのようなうつぼは、太平洋沿岸に多く生息している釣り人にはおなじみの魚類です。
このうつぼ、海のギャングというだけあって噛まれると超危険!鋭い歯で人間の指も「ばきっ」と噛み切ってしまうほど。下手に触ると怪我をするため、釣り人は釣り上げても糸ごと切って逃してしまうそうです。
そんな危険なうつぼですが、実は高知県ではとても愛されています。筆者は高知出身ですが、スーパーに行くと鮮魚売場に必ずうつぼが並んでいました。そう、高知県ではうつぼを食べるんです!
ちなみに、高知県のほかにも長崎県や和歌山県の一部にもうつぼ料理はあるようです。
うつぼが全国に普及しない致命的な原因
スーパーにうつぼが売っているとはいっても、もちろんグロテスクな生の姿のままでは並んでいません。たいてい「うつぼのたたき」状態で売っています。
高知ではポピュラーなうつぼ。流通の良くなったこの時代ですから、もっと日本全国で見かけても良いはずだと思いませんか?
しかしうつぼには外見のグロテスクさや捕獲の危険度以外にも食べにくい致命的原因があるんです。
それはは…「さばくのが超むずかしい!」こと。
魚屋さんや漁師さんがさばこうと思っても、最初は2時間以上かかりるほどの曲者。うつぼさばきのプロになるまでにはなんと2年の修行が必要だとか!そしてプロでも1匹さばくのに10〜20分を要するそうです。
うつぼは皮がとても固くめくりづらい上に、鋭くて曲がった大小の骨が入り組んでいて、包丁もすぐにボロボロになってしまいます。また身の中にも無数の骨が隠れているため素人にはどうなっているのかさっぱりわからない…まさにブラックボックスのような魚。
詳しいさばき方は秘伝で、高知の魚屋さんや料亭も自分ではさばかず、須崎という海辺の街のうつぼプロがさばいたうつぼを購入しているそうです。
面白いのはさばく前のぬめりのとり方。普通は塩をしてぬめりをとりますが、たくさんだと面倒くさいのでうつぼを洗濯機にまとめて入れて回すのだとか。
■うつぼのおいしい食べ方
うつぼは、生ぐささがなくてお肉に近い味がする魚。おすすめの食べ方をご紹介します。
うつぼのたたき
尾から上の柔らかい部分をつかいます。うす塩をして、両面を丁寧に焼きます。平作りにして、大葉、ゆず、ネギなどの薬味を乗せて盛り付けタレでいただきます。歯ごたえがよく、脂もほどよく乗っているためとてもおいしいです。
うつぼの煮こごり
適当に切り、砂糖醤油としょうがで煮込みます。汁ごと冷ますとゼラチン質が多いので寒天などを入れなくてもそのまま固まってくれます。かたい尾の部分は唐揚げにするとGood! 酒呑みはうつぼの干物で一杯もおすすめ。
高知のソウルフードうつぼ、見つけたらぜひ食べてみてください。
ただし、ご自分で釣ったうつぼはうっかり手を出して怪我をしないように気をつけてくださいね。陸上でも30分は元気だそうです。自分でさばくのはむずかしいですが、チャレンジャーは参考記事のさばきかた※1を読んで試してみてもいいかもしれません。
参考:
※1「高知再発見とさぶし【うつぼ解体新書】」
「図鑑&料理 土佐の魚の全て」岡村収(図鑑監修)宮川逸雄(料理監修)高知新聞社
「土佐の味ふるさとの台所」高知県生活改善協会編 「ふるさとの台所」復刊を熱望する買い事務局