タケノコの生命力から人間にどんな影響が?
春もたけなわ、タケノコが最盛期を迎えていますね。
日本には実に600種ほども竹の仲間が生育するといわれており[※1]、モウソウチク(孟宗竹)やマダケ(真竹)、ハチク(淡竹)、チシマザサ(千島笹、別名:ネマガリダケ)など、さまざまな種の芽を「タケノコ」として食べることができます。ただ、市場に出回るタケノコといえば一般的にはモウソウチクの芽のこと。
色白であまり栄養がなさそうに見えるタケノコですが、1日に数十cmも伸びる驚異的な生命力はきっと人間にも影響をもたらすはず。ということで、タケノコをぜひ食べていただきたい理由を3つご紹介します。
その1:タケノコには抗がん作用も
タケノコはカリウムなどのミネラルが豊富で、食物繊維が多いのが特徴。またアスパラギン酸やチロシンなどのアミノ酸も多く含んでいます[※2]。ゆでたタケノコに出てくる白い粉はチロシンなので洗い流さないでくださいね。
実はタケノコの抽出物には抗がん作用があることが発見され、抗がん剤の提供を目的とした特許も取得されているんです[※3]。
その2:腸内フローラを整えて肥満を抑制する?
また、タケノコの食物繊維には腸内フローラを調整する機能があることが報告されています[※4]。この研究では、健康な若い女性に7日間タケノコを摂取してもらったところ、排泄物中に生きた乳酸菌類の量が増えるなどの変化が認められました。
さらに、モウソウチクではなくマチク(麻竹)に近い種のタケノコを用いた研究にはなりますが、肥満抑制効果を調べたマウスの実験結果もあります[※5]。ちなみにマチクはメンマの原料になる種ですよ。
こちらの研究では各種の食物繊維による肥満抑制効果を比較。5種の食物繊維を添加した高脂肪食をマウスに与える実験を6週間にわたって実施したところ、小麦繊維や大豆繊維などに比べ、タケノコ繊維は体重増加を抑えることが明らかに。血中コレステロールの値も抑制されました。こうした効果も、タケノコ繊維が腸内フローラを調整するためだと考えられています。
その3:国産タケノコを食べて里山保全
モウソウチクは、実は日本にもともと自生していたわけではなく、江戸時代に中国から移入された種なんです。日本最古の物語とされる「竹取物語」が平安時代に成立したことを考えると、ヒロイン「かぐや姫」はモウソウチク以外の竹から生まれたのでしょうね。
すっかり日本に定着したモウソウチクですが、中国をはじめとする輸入タケノコに押され、国内のタケノコ生産量はここ30年ほどでぐっと減少しました[※6]。その結果、モウソウチクの竹林が管理されずに放置されることに。
こうした放置モウソウチク林では、その旺盛な生命力が人間にとって厄介な問題をもたらしています。モウソウチク林が拡大し、その面積を増やしているのです[※7]。モウソウチク林の境界線が前進する速度はなんと年間0.5~2.6mほど。最大では10m以上になるという報告もあります。ものすごいスピードで森林や耕作放棄地などを飲み込んでいるんです。
国産タケノコを食べることで、竹林がきちんと管理され、日本の原風景ともいうべき里山の美しい自然を守ることにつながります。スーパーなどに並ぶ国産タケノコは少々いいお値段ですが、こうした背景を知った上で商品を選びたいですね。ゴールデンウィークにはぜひタケノコ掘りに挑戦してみてはいかがですか。
参考:
※1 竹のおはなし(農林水産省)
※2 食品成分データベース(文部科学省)
※3 Use of an antitumor agent
※4 The Nutritional Composition of Bamboo Shoots and the Effects of its Fiber on Intestinal Microorganisms
※5 Bamboo shoot fiber prevents obesity in mice by modulating the gut microbiota
※6 竹関係資料(林野庁)
※7 モウソウチク林の拡大が林地の公益的機能に与える影響 ―総合的理解に向けて―