唐辛子(カプサイシン)は摂取量に気をつけて。
カプサイシンは唐辛子の辛味成分。数々の健康効果があり、主なものでは肥満予防、ダイエット効果、血流改善、冷え性改善、交感神経の活性化、食欲増進効果、胃粘膜保護作用などが挙げられます。「辛味」としてうまく利用することで減塩効果も期待されているほか、鎮痛作用もあります。
とくによく見かけるのは「ダイエット効果」ではないでしょうか。「カプサイシンを進んで摂取しましょう!」と言われることも多いですが、これに際し気をつけたいのが摂取量です。
カプサイシンの過剰摂取は健康障害を引き起こすかも
その多岐にわたる生理作用から機能性成分として注目されているカプサイシンですが、問題もあります。過剰に摂取してしまうと人によっては胃腸が荒れたり、吐き気や嘔吐、高血圧など、健康的な被害を引き起こす可能性があること。唐辛子を大量に食べた後、胃が痛くなったりトイレで大変なことになったりするアレです。
食品安全委員会によると成人の摂取量の限界は、カプサイシン5mg/kg/日。例えば50kgの人であれば250mgになります。カプサイシンの含有量は個体差がかなり大きいものの鷹の爪であれば0.3mg〜0.7mg/1本程度、一味唐辛子であれば20.7mg〜149.7mg/100g程度[※1]。
カレーや調味料に含まれていることを考えても、通常食べる分には問題ないといえますが、サプリメントや「ダイエット効果があるから」と大量に摂取する行為については注意が必要です。
また刺激耐性にはあくまで個人差があります。極端な例ですが、カレー大国インドでは唐辛子系スパイスの摂取量は2.5g/人/日[※2]。辛いカレーを食べて育ったインド人と、だしの旨味を味わって育った日本人では刺激耐性が異なるのは当然のこと。日常的に摂取していない人はとくに気をつけたほうが良いかもしれません。
辛くない唐辛子の成分「カプシエイト」
近年ではカプサイシンと同等の生理作用を持つとされる「カプシエイト」も注目されています。タイ産の辛くない唐辛子「CH19Sweet」からしか抽出できないためサプリメントなどで見かける場合が多いでしょう。
カプサイシン、カプシエイトをマウスに経口投与した実験によってカプシエイトはカプサイシンと同様に脂質の代謝上昇、エネルギー代謝増加、体脂肪蓄積を抑制することがわかっています。ヒトを対象とした長期摂取実験もあり、生のCH19Sweet数本を1日3回にわたってカロリー計算で決められた食事と一緒に摂取したところ、体重や体脂肪率、体脂肪量の減少効果が確認されたそうです。
「辛くないなら刺激じゃない=安全安心!」と思いがちですが、一概に喜べない可能性もあります。例えば受容体はカプサイシンと同じTRPV1であると考えられていますが、生体に作用する際の詳細のメカニズムについてはわかっていません。
カプシエイトは足底皮下に投与した場合痛みを発生させるという報告もあります。辛味がないといえど、過剰摂取することで胃腸に対してカプサイシンと同様の影響を及ぼす可能性もゼロではないことを忘れないようにしましょう。
ありがたい効果がある唐辛子。薬も摂取しすぎれば毒になることもあります。自分の体と相談しながら、適度な摂取を心がけてくださいね。
参考:
※1 カプサイシン含有量
※2 食品安全委員会が収集したハザードに関する主な情報
カプサイシンに関する詳細情報
トウガラシの辛味と痛みとエネルギー代謝