あなたは、味覚に自信がありますか?もとい、あなたの味覚は正常ですか?
人間の体において味を感じるセンサーである味蕾細胞は10日に1度生まれ変わっています。
極端に言ってしまえば、今日の味蕾細胞が正常でも、10日後には隠れ味覚障害になっている可能性もあるんです。
味覚障害の種類8つ
「味覚障害」と一言で言っても、実は8つもの細かな分類があります。
1. 味覚減退
濃い味だとわかるが、薄い味はわからないもの
2. 無味症
味を濃くしても、全くわからないもの
3. 解離性無味症
特定の味のみわからないもの
例)甘い味だけわからない、塩味だけわからない、など
4. 片側性無味症
左右のいずれかのみわからないもの
例)舌の右側では味を感じるが、左側では感じない、など
5. 自発性異常味覚
口の中に何も入っていないのに、何かの味がするもの
例)常にしょっぱい、常に苦い、など
6. 錯味症
味を取り違えて感じるもの
例)甘い味を苦いと感じる、など
7. 異味症
食べ物の味が本来の味と違って感じる状態
8. 悪味症
何を食べてもいやな味がする状態
味覚障害に陥っていしまうと、食事はただの栄養補給手段でしかなくなってしまいます。何も食べる気がしなくなったり、お腹が空いたという感覚自体を忘れてしまうことも…人間の三大欲求のひとつが失われるのです。
味覚障害になる原因
では、なぜ味覚障害になってしまうのでしょうか?主たる原因を8つ挙げてみます。
1. 口腔内乾燥
何らかの原因で唾液腺に障害が出ることで唾液量が低下。粘膜を荒れやすくし、味物質が運ばれにくくなることで味覚が感じにくくなります。
2. 味蕾細胞の障害
老化とともに味蕾は減少・萎縮することがわかっており、高齢者の未来の数は新生児の1/3にまで減少すると言われています。よって、味覚の閾値が上がり、味を感じにくくなります。
3. 亜鉛不足
過度のダイエットやファーストフードによる食生活の乱れ、また亜鉛吸収を妨げる食品添加物などで亜鉛が不足すると、味蕾細胞が生まれ変わりにくくなり、その働きが悪くなります。
4. 口腔内の荒れ・炎症
口の中が荒れると味蕾の働きが低下し、食事の摂取量も低下。味を感じにくくなります。
5. 神経障害
舌を支配している神経や脳の味覚をつかさどる部位が障害されると、信号が上手に伝わらなくなります。
6. 心理的な緊張・不安
食べ物が口に入ると味覚細胞から記憶や感覚をつかさどる“扁桃体”という部分が刺激され「美味しい」という感覚になります。しかし過度の緊張や不安で自律神経に負担がかかると扁桃体が刺激されにくくなり、美味しいという感覚や幸福感が感じられなくなってしまいます。
7. 薬の副作用
血圧を下げる薬、抗アレルギー剤、抗生剤などの長期服用によって、食物中の亜鉛が吸収されにくくなり亜鉛不足となってしまうケースがあります。また、抗がん剤は味蕾そのものや神経細胞に障害を与えることで味覚障害になってしまう可能性も。
8. 風邪などで鼻が詰まっている
これはみなさん経験があると思いますが、風邪などで匂いを感じないと味も感じられなくなります。
薬の副作用などは仕方がありませんが、味覚障害の原因が治せるものであるなら、意識的に回復を促していきたいものです。
味覚障害は誰にでも起こりうるもの
さて、ここまで読んで「私は一度も味覚障害になったことがない」と言える方はどれだけいらっしゃるのか…
ここで少し重めな筆者の体験談をお話しします。筆者も重度の味覚障害に陥ったことがありました。何を食べても砂の味にしか感じない…7.異味症もしくは8.悪味症ですね。原因は6.心理的な緊張・不安。
ちょうどその頃、味博士と話す機会を得たことで味覚障害を治すヒントを得た…わけではなく、扁桃体の存在を学んだことが回復のきっかけに。扁桃体は雲の流れをぼーっと見たり、星空を眺めたりするなどで研ぎ澄まされてくるそうで、私の場合は山登りなどのリフレッシュで回復しました。
味覚障害は症状も原因もさまざまですが、日頃の心がけや行動で予防できるものもあります。そして、鍛えるすべもあります。
せっかく味覚があるのですから、食べ物の美味しさを存分に感じて幸せな気分に浸りたいですよね。皆さんも是非、当たり前のように持ち合わせた味覚について、改めて意識してみてはいかがでしょうか?
参考:
「味覚力」を鍛えれば病気にならない 味博士トレーニングメソッド (講談社+α新書)
味覚障害の原因と対応
味覚を識別する中枢機構
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