世界で一番ミシュランの星が多い国、日本。旨味のわかる驚異の味覚

レストラン格付けで高名なミシュラン・ガイド。
フランスのタイヤメーカーであるミシュランが、ユーザーにより多く車での外出の機会を与えてタイヤの売上拡大をねらったことから始まった、言わずとしれたレストランガイドです。

ヨーロッパの格式ある名店ばかりが選ばれているイメージがありますが、実は、星をとったレストランの件数で比較すると、本家フランスをさしおいて、圧倒的に日本が多いのです。都市別で比較しても東京がずば抜けて多く、京都と大阪も善戦しています。2019年度版でいうと3つ星、2つ星、1つ星を獲得した店舗数を比較すると、1位の東京が230店舗で、2位のパリ104店舗に倍以上差をつけています。

そして、今年1/27、パリで店を構える日本人シェフ、小林圭さんがフランス版で日本人初となる三つ星を獲得したというニュースも飛び込んできました。

ミシュランの評価基準は、「素材の質」「料理技術の高さ」「独創性」「価値に見合った価格」「常に安定した料理全体の一貫性」の5つ。星をつけるため、正社員である匿名調査員が覆面調査します。また、必ず複数人で調査します。

100年以上の歴史の中で育まれてきた信頼のおける調査によって選定されるミシュランガイド。そんなミシュランで日本人や日本のお店が評価されるのは嬉しいことですよね。

ですが、どうして日本にそんなにも美食のお店が多いのでしょうか。

味博士の研究所では、その謎は「旨味」にあると考えています。

日本人の旨味判別能力は世界でも群を抜いています。そもそも旨味がわからない民族も多いのです。

旨味は最も後になって発見された基本味です。長らく本当に基本味なのか議論されていましたが、2000年になってやっと米国マイアミ大学のニルパ・チャウダリ教授の研究チームが舌で旨味を感知する受容体を発見し、晴れて基本味の1つとなりました。

それより100年近くも前、1907年に旨味成分であるグルタミン酸ナトリウムを発見したのは、日本人化学者である池田菊苗博士でした。昆布やカツオで出汁をとる出汁文化が発達した日本では、旨味はおなじみのものでしたからこの国で発見されたのも納得です。

島国ならではの、魚や海藻を用いる食習慣と、人工的な味付けをせず、自然そのままの味を楽しむ食文化により日本の味覚は発達しました。ソースで味付けするヨーロッパや、香辛料で付けするアジアの国々とは違う、素材の旨味を積極的に感じる薄味の文化です。

薄い味を味わおうとする行為によって、より味覚が繊細に感じられるようになります。その積み重ねが日本人の特異な味覚を生み出したのでしょう。

とはいっても、近年、添加物や濃い味を好む日本人が増えています。誇るべき食文化が保存され、さらに発展していけるように、わたしたちも意識して繊細な自然の風味を楽しむ生活をしたいものですね。

日本人の味覚について気になったかたは拙著を御覧ください。


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