昨今、著作権や商標権といった権利が見直されてきています。法律改正のニュースが流れることもしばしばあり、以前よりコピーライトに関心を持っている人は多いでしょう。
そこで今回は独自の味覚やそのコピーライトに関してのニュースを取り上げてみたいと思います。
味覚のコピーライトは認められない?
味覚に関する裁判を起こしたのは、オランダのチーズブランド「Levola Hengelo」です。
アロマが効いたクリームチーズ「Heksenkaas(魔女のチーズ)」の味覚をめぐって、ライバルの会社「Smilde」の商品「Witte Wievenkaas」を訴えていました。その味が、あまりに酷似しているというのが理由です。
Levola Hengelo社は、Smildeは自社製品の「味覚のコピーライト」を侵害しており、今後の生産を中止するべきだと主張し、訴訟を起こしたのです。
しかし、欧州司法裁判所が出した答えは「味覚は著作権によって保護できない」というものでした。
理由は「主観的だから」
裁判所が、Levola Hengeloにノーを突き付けた理由は、味覚があまりに主観的な問題である、ということ。著作権を認めて保護するには、曖昧な点が多すぎるというわけです。
オリジナルとしてその味を確立するために必要な「客観性」を、味覚に関して認められないと判断したのです。
著作権が認められているのは、音楽、文芸、映像、画像などさまざまですが、これらは容易に識別や認識が可能ですよね。ところが「味覚」は、それを味わう人や状況に大きく左右されるという足かせが存在します。
もちろん、科学の分野からは味覚もさまざまな要素から特定が可能という反論もありました。弊社の味覚センサーレオのように味覚を定量化する機械を用いるといった手段もありますよね。
しかし、今回の裁判では、まだ認められなかったようです。
今後はどうなる?
味覚に関する著作権の裁判は、オランダのチーズだけではありません。大手食品会社ネスレが、自社のチョコレート「キットカット」のコピーライトを認めるよう裁判を起こしたこともあります。
しかし、裁判所の下した判決は「キットカットには、著作権で保護されるほどの独自性は認められない」というもの。
現状は限定された産地の、独自に開発した味わえばすぐにそれとわかる素材を用いて、独自の味覚を有する製品等でもなければ、裁判で「味覚のコピーライト」が認められるのは難しいのかもしれません。
しかし食品ではないものの、「嗅覚」に関してはコピーライトが認められた案件があります。
2006年に化粧品会社ランコムが起こした裁判では、同社が生産する香水に関して他のブランドが模倣することはまかりならぬ、とオランダの裁判所が判決を下しているのです。
食品と香水では香りのバリエーションが異なるので事情も変わるでしょうが、今後、科学が発展していけば「味覚」にもコピーライトがつく時代がくるかもしれませんね。