熱中症対策に「味覚」?
花粉などの悩みは増えるものの、気温が上がるのが嬉しいこの季節。冬期の引きこもり生活を終え、春になったらトレッキングやハイキングに行こうと予定を立てている人も多いはず。
でも同時に、だんだん暖かくなるこれからの時期に気を付けなくてはいけないのが「熱中症」です。山の中という特殊な環境で事故を起こさないためには、自分のカラダで起こっている変化をきちんと自覚しておくことが大切。そしてそれには……「味覚」が役立つんです。
登山中は熱中症の進行に気が付きにくい
人気のレジャースポーツである登山ですが、野球に次いで2番目に熱中症発症件数が多い種目[※1]。登山の際、トイレの場所が限られるためについつい水分摂取を控えてしまった……という経験はありませんか?一般的に、こうしたことが熱中症につながると言われています。
気づかないうちに悪化する登山中の熱中症ですが、自分で気づく方法に関しても研究がされています。被験者に2時間の登山をしてもらい、登山前と登頂直後に「ソルセイブ」と呼ばれる塩見域値を調べるための試験紙を舐めて塩分の感じ方に差があるかどうか調べた実験[※2]では、登頂直後は登山前よりも塩分を感じやすくなることが分かりました。これは多量の発汗で血液中のナトリウム濃度が減少し、体がミネラル分を欲しがっている状態にあるためなのだそう。
また、登山中の水分補給は水のみでミネラル分を補給していなかったため、喉の渇きを感じる被験者が多く、熱中症の前段階である「かくれ熱中症」の状態になっていたことが判明したのです。
「しょっぱい」と思ったら要注意!
塩味と熱中症の関係はわかったわけですが、いざ実際に登山に「ソルセイブ」なるものを携行し、「塩味閾値」を測定しながら山を登る、というのもあまり現実的ではありませんよね。そこで活用したいのが、登山に必ず持って行く「行動食」。歩きながらでもこまめに摂ることができる栄養補給のための食糧です。
とくに塩分に対する味覚の変化を測るためには、塩飴やスポーツドリンクなどを利用するのがいいでしょう。普段から口にしていて味をよく知っている製品を登山の時にも携行すれば、味覚に変化が出た時に簡単に気付くことができます。
同じ塩飴なのに、「いつもよりしょっぱい?」と感じたり、同じスポーツドリンクでも「なんだか味が濃い?」と感じたりすることがあったら「かくれ熱中症」のサインかもしれませんよ!深刻な症状におちいる前に無理をせず休憩し、適切に水分とミネラル分を補給しましょう!
※1 環境省「熱中症の要因分析」、平成22年度熱中症とヒートアイランド現象の関係解析調査業務報告書、平成23年3月、1.2
※2 「夏季の六甲山登山における塩味閾値の変化について:食塩含浸濾紙の有用性の検証」、流通科学大学学術研究会、流通科学大学論集. 人間・社会・自然編 28(1), 77-83, 2015-07