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胃腸に味覚の受容体が存在する理由を真面目に考察する

胃腸に味覚の受容体が存在する理由を真面目に考察する

味蕾があるのは舌の上ですから、味は舌で感じるのが当たり前と思いきや、最近は胃や腸内にも味覚受容体があることがわかってきました。

当初、発見されたのは甘味受容体。「腸で甘味を感じる」と聞くと少し不思議な気がしますが、考えてみると実は納得のいく理由があるんです。

胃腸内の甘味受容体が血糖のコントロールに関与している

血糖値(血中グルコース濃度)は、砂糖を含むお菓子など甘いものを食べたら上がると思われがちです。しかし、実際に大きく効くのはご飯やパン、うどんといった炭水化物。炭水化物はグルコース(ブドウ糖)がたくさんつながってできているからです。

しかし、炭水化物は口の中ではそれほど甘くありません。

炭水化物(典型的にはでんぷん)は唾液中のアミラーゼで一部が麦芽糖に変化します。これで初めて甘味が出てきます。ご飯やパンをよく噛んだ時の甘味ですね。ただ、この段階では特別、甘味が強いわけではありません。

また、唾液中のアミラーゼですべての炭水化物を分解するのは難しく、膵臓(すいぞう)から腸内に注入される膵液中のアミラーゼで多くの炭水化物が麦芽糖に変化します。

麦芽糖はグルコース(ブドウ糖)が2個くっついたもの。そして麦芽糖は、小腸内のマルターゼの作用でさらに分解されてグルコースになり吸収されます。つまり、口の内部で甘味を感知して血糖値をコントロールする戦略はそれほど有効ではありません。でんぷんなど、大量のグルコースを産み出す物質は口に入って来た段階ではそれ程甘味に寄与していないからです。

一方、血中のグルコース量を感知して血糖値を下げるのでは実は遅いんです。血中のグルコース量は急速に高くなるため、それを監視してインシュリン分泌を増やしても間に合いません。一時的にせよ高血糖の状態になってしまいます。

となると、腸内で糖分量を感知して血糖値をコントロールするのがいちばん有効なやり方。腸内であれば、「これから血中に入って来るグルコース量」が正確に測れるからです。

実際、最近では胃腸内の甘味受容体の異常が糖尿病と関係しているという研究もあります。

胃腸に潜む旨味受容体

最近では、旨味成分であるグルタミン酸を感知する受容体も胃腸内にあることがわかってきました 。しかしこれに関しては、甘味受容体のような存在意義が考えにくいと思われます。

確かにグルタミン酸はアミノ酸の一種。タンパク質を分解すると出てきます。ただ、それならばアミノ酸全般を感知する受容体が胃腸内にあれば良く、グルタミン酸の監視に特化する必要はありませんよね。

そもそも、血中アミノ酸が高くなっても高血糖のような悪影響はないので、グルタミン酸その他のアミノ酸の量を監視する必要性は乏しいのではないでしょうか。

現状では、栄養吸収を効率的に進めるためにグルタミン酸を感知しているのではないかと考えられていますが[*1]、実際にはそれだけではないかもしれません。

また実は、マウスでは口内の旨味受容体はグルタミン酸だけでなく、アミノ酸全般に対応することが知られています[*2]。

実際に味覚が身体に良いもの悪いものを選別するためにあるのであれば、「旨味」はアミノ酸全般であって良いはず。霊長類では、なんらかの理由で「旨味」をグルタミン酸に特化しているのです。

ひょっとすると、腸はグルタミン酸が大好きで、それが遡って口内の旨味受容体をグルタミン酸に特化させるように進化させてきたのかも?

お腹のことを、我々は単に食べ物を消化する場所としか思っていませんが、「腸は第2の脳」とも言われます。実は脳が意識する味覚とは別の味覚に我々は知らず知らず支配されているのかもしれません。

お口と胃腸の味覚受容体の関係には、まだまだ深い謎が潜んでいそうです。

参考:
*1: 加治いずみ,秋葉保忠「上部消化管における栄養素感知と輸送機構」
*2: An amino-acid taste receptor. Nature: 2002, 416(6877);199-202 [PubMed:11894099][WorldCat.org] [DOI]

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