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驚愕!植物の「味覚」が発見される

2017年4月19日

植物にも「味覚」があった!?

驚愕!植物の「味覚」が発見される

2017年3月、東京大学大学院農学生命科学研究科から発表された衝撃的な研究成果[※1][※2]をご存知ですか?

それは、植物が自身の「味覚」をうまく利用しているということ。

今回の主役は「ヤブガラシ」。ブドウ科のつる植物です。一説には「藪を枯らしてしまうほど繁茂する」ことからその名が付けられたといわれており、厄介な雑草という不名誉なレッテルを貼られてしまっています。別名は「ビンボウカズラ」と、もはや貧乏神の様相。そんな哀れな「ヤブガラシ」に「味覚」という驚くべき能力があることが発見され、雑草界の嫌われ者は一躍スポットライトを浴びることになったのです。

触れた相手を化学的に識別する

研究の発表者である深野祐也助教は、ヤブガラシの巻きひげが同種の葉と他種の葉を識別し、同種には巻き付かないようにしていることを発見しました。

識別の決め手となるのは、シュウ酸化合物の濃度。ヤブガラシの葉にはシュウ酸化合物が高濃度で含まれます。不揮発性の物質であるシュウ酸化合物は空気中を漂わないため、ヤブガラシの巻きひげは直接触れることで相手を認識していると考えられます(下図参照)。

驚愕!植物の「味覚」が発見される
接触した植物のシュウ酸濃度と、その植物に対するヤブガラシの巻きつき(参考※1より引用)

つまりヤブガラシの巻きひげは「接触した物質を化学的に識別する能力:接触化学センサー」をもっているというのです。

この接触化学センサーこそ、動物では「味覚」と定義されるもの。外界を把握するための五感は「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」「味覚」からなります。「視覚」「聴覚」「触覚」はそれぞれ光、音、圧力という物理量を測定するセンサーです。一方、「嗅覚」と「味覚」で測定しているのは化学量。「嗅覚」が揮発性の化学物質を検知するのに対し、「味覚」は接触によって化学物質を識別するセンサーです。

「味覚」がついに「動物界」の垣根を越えた?

私たち人間も舌にある「味蕾」という器官が物に接触することで、その化学的性質を認識しています。動物の「味覚」は、その生活スタイルによって多様に進化してきました。

例えば魚類の「味覚」はアミノ酸に対して非常に敏感。口の中だけでなく、全身に味蕾が分布しているナマズの仲間もいます[※3]。水中生活で効率よく食べ物にありつくために獲得した形態ですね。

また「味覚」は脊椎動物にとどまらず、昆虫でも見つかっています。例えばアゲハチョウのメスは前足の先端で植物に含まれる化学物質を認識。産卵する際に前足で触れて「味見」をすることにより、幼虫が食べられる植物を選択しているのです[※4]。

このように動物は、触れる物質を化学的に識別するセンサー「味覚」を巧みに利用して生きています。

そして今回ついに「味覚」は動物界の垣根を越え、植物でも発見されるに至りました。自分だけでは上に成長することができず、安定した物に巻き付いて登っていくつる植物。藪を枯らすほど高い密度で繁茂するヤブガラシにとって、同種を避けて他種に選択的に巻き付く能力は重要です。進化の過程で、巻きひげに「舌」のような機能を獲得し、効率よく登っていく技を手に入れたと考えられます。

まるで藪の中から以下のようなやりとりが聞こえてくるようですね。

ヤブガラシ:「ペロッ。シュウ酸化合物の濃度が低いな。これは他種の味だ。よし、巻き付くぞ。」
エノコログサ:「ひぇ~、グルグルに縛られて覆い被される~。」
ヤブガラシ:「ペロペロ。お、今度はシュウ酸化合物の濃度が高いな。同種の味だから巻き付かないようにしよう。」

……このしたたかさでは、やっぱり嫌われてしまいそうです。

おまけ:「味覚」のあるヤブガラシを味わってみた

ヤブガラシについて調べてみたところ、なんと新芽は茹でてアク抜きをすると食用になることが判明。山菜・野草好きの筆者としては試さないわけにはいきません。

近所の草地を散策し、ほどなくヤブガラシを発見。新芽は紫色をしています。収穫して持ち帰り、重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えたお湯で茹でてから水にさらしてアクを抜きました。

茹でると紫色が抜けて緑色へ変化。少し粘り気があり、モロヘイヤのような独特の香りがします。何も味付けせずに茎の部分を味見してみると、かなりピリッとくる刺激に舌が襲われました。ヤブガラシの由来は「藪の辛子」なのではないかと疑いたくなるほどです。

シュウ酸を多く含む植物には「ゴマ和え」で化学的に対処するのがおすすめ。ヤブガラシもゴマ和えにして食べることにしました。ゴマとのコラボレーションで辛味もマイルドになり、何を食べさせられるのかと戦々恐々としていた家族の評判も上々の一品に。「味覚」のある植物を味わってみたところ、なかなかイケる味であることがわかったのでした。嫌われ者に、少しだけ温かい目が向けられるようになることを願います。

参考:
※1 東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース
※2 Vine tendrils use contact chemoreception to avoid conspecific leaves(深野祐也助教・原著論文)
※3 The taste system of the channel catfish: from biophysics to behavior
※4 A gustatory receptor involved in host plant recognition for oviposition of a swallowtail butterfly

琴田まこ
生態学と化学で「食」を斬るサイエンスコミュニケーター。
旬のものと地のものに目がない。今日も自然の恵みに感謝。
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